episode256 二重取りの愛

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両手を縛られているから 逃げようにも逃げられない。 「たまたま手に入ったんだ。おまえがどうしても見たいと言うなら……付き合ってやってもいい」 僕は真正面から痛いほどの愛を受け入れるしかない。 九条さんは目を閉じ苦し気に 僕の中に激しく己を打ち付ける。 「いや、おまえの為に買ったわけじゃないからな……どうしても行きたければの話だ」 そこで分かった。 征司の歯切れが悪いのはいつもこんな時だ。 純粋に僕の為に何かしてくれる時。 ただ単に僕を喜ばせようとする時。 「たまたま俺もその日のその時間は身体があいてる……でなきゃゴミ箱に突っ込んでいたんだがな」 照れたような咳払い——。
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