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両手を縛られているから
逃げようにも逃げられない。
「たまたま手に入ったんだ。おまえがどうしても見たいと言うなら……付き合ってやってもいい」
僕は真正面から痛いほどの愛を受け入れるしかない。
九条さんは目を閉じ苦し気に
僕の中に激しく己を打ち付ける。
「いや、おまえの為に買ったわけじゃないからな……どうしても行きたければの話だ」
そこで分かった。
征司の歯切れが悪いのはいつもこんな時だ。
純粋に僕の為に何かしてくれる時。
ただ単に僕を喜ばせようとする時。
「たまたま俺もその日のその時間は身体があいてる……でなきゃゴミ箱に突っ込んでいたんだがな」
照れたような咳払い——。
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