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二重取りした愛がこんな時
重く重くのしかかる。
「おまえのチケット置いて行くから来るなら来い」
「和樹……もうイクよ……」
僕の内側と外側から
2人がほぼ同時に囁いた。
「ちなみにバルコニー席だそうだ」
言い残して足音が
一歩また一歩離れてゆく。
「アア……」
全身が粟立つ。
九条さんが唇に皮肉な笑みを浮かべて
「案外同じ席かもね——」
身震いすると放心状態の僕の中に盛大に放った。
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