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「どうした?ぼんやりして——芝居は楽しくなかった?」
バルコニー席に2人きり舞台の幕が下りると。
九条さんは甘い声で囁いて僕の胸元に指を忍ばせた。
「あなたが悪戯するなんて珍しい」
「君だよ君——最近よくアンティークのセーラーシャツを着るでしょう」
「うん。可愛いだろ?ほら、有名な少年合唱団みたいで」
「まさか。あの子たちにこんな挑発的なの着せてみろ」
胸元の開き具合を言ってるのか。
「何?ローマ法王が出て来てお仕置きでも?」
「ああ、それはあるかもね」
それともたまにシャツが肩から落ちること?
「仕方ないよ。僕は肩が細いんだ」
「知ってるよ——」
九条さんは自分のモノだとばかり答えて
シャツの肩口を持ち上げる。
「だから外国製のシャツはほらこうなっちゃう」
彼が直した途端にまた反対側がストンと落ちて
今度は左側の鎖骨から肩先が丸見えになる。
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