37人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「しばらく僕んとこに来ないか?」
「それは……」
僕は首を横に振る。
僕がいない間に心霊騒動が持ち上がった後だ。
僕が家に戻ってようやくそれが終息したのに――。
「さすがにそこまでしなくても」
何より僕自身が億劫だった。
花を食らい疑心暗鬼に陥ってはいたが
僕は実際トラブルにも偏愛にももう慣れっこになっている節があった。
「そうか、でも——」
椎名さんはちょっとの間言い淀んで。
「良くないことが起こる予感がするんだ」
僕の髪を撫で下ろし真顔でそう言った。
「良くないことか――」
僕もそんな気がする。
でも怖いから鼻で笑って席を立った。
「申し訳ないけどやっぱりランチは結構」
「それでどこ行くの?」
「帰って昼に寝ます。そしたら夜起きていられるでしょう」
「その場凌ぎにもほどがある!」
椎名さんは呆れ顔で肩をすくめた。
「その場を凌げれば問題は問題じゃなくなる。でしょ?」
お得意の楽観主義がこの先どうなるか――。
覗きたい?
いいよ。
じゃあ続きを話そうか。
話せる口がある間にね――。
最初のコメントを投稿しよう!