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「それを僕と会う日に選んできて来るんだもん——君はズルいよ」
場内が徐々に明るくなってくる。
赤い絨毯が敷かれた劇場から階下の人波は少しずつ捌けてゆく。
「正直に好きだと仰ったら?」
幸いここはまだぼんやりと薄暗い。
「ちょっ……和樹っ……」
僕はセーラーシャツを捲り上げ
誘い込むように椅子の上で身を低くする。
「それともお仕置きしてもいいよ?」
「マズいよ……こんなとこで」
「こんなとこだからじゃない」
ピンク色のタイを締めた貴公子も
「お仕置きして——」
もう少しだけシャツの裾を持ち上げながら
吐息で囁くとさすがに
「声は出しちゃダメだ――分かったね?」
「うん」
誘惑には勝てなかったみたいだ。
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