37人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
彼の愛を試すとか——そんなことじゃない。
「……あなたに軽蔑されたと思った」
それもくだらない言い訳だ。
言葉一つで軽蔑されるくらいなら
僕らの関係なんてとっくの昔に終わってる。
「しない。僕が君を軽んじることは絶対にない」
九条さんは当然のように言い切る。
僕もまた当然のようにその言葉は真実だと知っている。
「やめてよ。あなたみたいな人と自分は不釣り合いだって最初から分かってるんだ」
そう言うと調子のいい演出効果みたいに
僕の瞳から大粒の涙が零れた。
それが演技でも嘘でも。
「泣かないで、Mon Petit chat——やっぱり君を愛するのにふさわしい場所を用意させてくれないか?」
九条さんは優しく僕を包み込む。
「今夜は特に——そんな君を大切にしたいんだ。頼むよ」
最初のコメントを投稿しよう!