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九条敬は心得ている。
「……分かった」
精神的にダメになった時の僕の扱い方。
どうしょうもないような駄々をこねる僕の宥め方。
「いい子だ。もう泣かない——ね?」
頭を撫でなかなか目線を合わせようとしない僕の顔を覗き込んで。
ズルいくらい爽やかな笑顔を浮かべる。
それで会場を出て——どうしたかって言うと。
「ただいま」
僕はどうしてもその気に慣れなかったわけで。
「おかえりなさいませ、和樹坊ちゃま。お食事はお済ですか?」
「多分」
「それじゃお茶の用意を致しましょうか?」
「いい、寝る——」
「それでは……」
「いいってば!」
うるさい老執事のいる屋敷に帰って来てしまったんだ。
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