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どうして戻ったかって?
もちろん彼をもっと夢中にさせる為さ——。
そういきがってみても嘘を吐く相手が自分では分が悪い。
正直、耐えられそうになかったんだ。
大切にされることにも。
彼が僕に与えてくれる全ての物にも。
なぜだろう。
愛されることを求めていたはずなのに
それを完全に得てしまうと逆に失ったような気分になる。
僕の知る愛の形はいつだって複雑だ。
征司の部屋に灯りは灯っていない。
閉ざされた扉に手をかける勇気もなく僕は自室へ引き返す。
「今夜も花を食らうか?」
自嘲気に問うて高笑い。
勘弁だね。
草食獣じゃあるまいし。
「冗談じゃない、よし見てろよ」
弱い心に打ち勝つべく
僕が考えた秘策とは——。
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