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episode256 二重取りの愛
それはありがたいことに毎日ではなかった。
夢を見る日と見ない日があるように。
でも僕の場合夢を見る日は必ず
庭で花を貪り食うらしい。
征司と一緒の夜は不思議と何も起こらなかった。
九条さんと過ごす日も。
自制心が働いているのかもしれない。
あるいは脳か心か――知らないけど僕のどこかが満たされるのか。
とにかく花を食う日は決まって一人の夜だ。
一度は薫が止めに来たらしい。
翌日聞かされたけど僕は何も覚えちゃいなかった。
薫が言うにはとにかく無心で花弁を食らってるんだって。
生まれたばかりの芋虫みたいにそりゃたくさん。
「次はサナギにでもなるのか?天宮和樹――」
溜め息交じり吐き捨てて鏡の前で僕は赤い舌を出す。
口の中が時々チクチクすることはあったけど。
僕の腹は毒の強い持ち主に似て
花弁を主食にしたくらいじゃビクともしないようだった。
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