人ごみの中で

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「たっ、裕太、裕太っ!」 目を開けるとそこは、白くてどこか薬品くさい室内。 病院だった。 母さんが、僕の手を握って呼び掛けている。 「母さん……、美空は?」 僕は何も考えずにそう言っていた。 母さんは気まずそうな顔をしている。 ああ、やっぱり。 そうだったんだ。 「死んだんだ」 僕はそうつぶやいていた。 母さんには聞こえなかったようだった。 あそこは天国なのか三途の川の川原なのか、それとも閻魔大王の判定の順番待ちの場所なのか。 死んだ人や死にかけた人が行くところなのだ。 あのおねえさんは病弱そうだったから、病気か何かで何度か死にかけているのかもしれない。 あの人ごみの先は。 美空が向かった先は美空の言った通り天国なのだろう。 ばいばい、美空。 僕は心の中でそうつぶやいた。
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