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ある少年(しょうねん)との出会(であ)い
ねえきみ、こんなところでうずくまってどうしたの。青ざめた顔しちゃって。どこかぐあいでも悪いのかな?
その少年は、道路のわきできれいに体育ずわりをしてしゃがんでいたのでした。秋も近づき、すずしくなってきた時期だったけれど、その夏の終わりはとくに湿気が多く、もしかしたらこの子は熱中症の疑いがあるのではないかと、私は身がまえたのでした。
けれども。
あ、あの。実はね、ぼく、今ね、こわいんだ。
どうして?
どうしてかっていうとね。うーん、言葉であらわすのは難しいから、絵でかいちゃおうかな。
その少年は、群がる人々の目や、九月最初の一日、夏休みの最終日へ必死にしがみつく学生たちの好奇なまなざしをしりめに、赤いバッグから夏休みの絵日記ではなさそうなお絵かきノートと色えんぴつをひっぱり出したのです。
とりあえず、熱中症ではないみたいで、よかった。
私は、きものすわったたいそうな子どもと出くわしたもんだなあと、関心して見ていました。
すると、少年はささっと一枚の絵を仕上げてしまいます。
はい、ぼくにはね、たくさんのひとの顔がね、こんな感じに見えるんだ。
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