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あれから十年以上は経った。
この春から大学生だ。
肩まである黒髪を首元で一つに束ね、Tシャツとジーパンで登校する。
目指すは、地味だが地味過ぎず、オシャレじゃないがダサ過ぎない格好。金銭面で不自由な苦学生のように、大学内で影の様に溶け込むのが目的だ。
これが意外と悩ましくて、中学・高校時代の、制服という名の一律化アイテムが恋しい毎日だ。
「今日は王子来てるって!」
「やった!授業始まる前に化粧直してくる!」
「あっ、私も!」
同じ学科の女子たちがキャッキャっと教室から出て行く。
王子というのは、環一斗(タマキカズト)という同級生だ。
高校生の時からモデル等の芸能活動をしており、大学にも申請を出して通学しながら続けている。
と、周りが噂していた。
私は関わらないように極力避けている。
必修授業や移動中は主に女子が周りを固めているし、渡瀬真菜(ワタセマナ)という名の私とは名前的に実験の班も遠いので、接触しないのは簡単だった。
今日までは。
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