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私が納得すると、王子は眉を寄せる。不機嫌な時の王子の表情だ。
「どうされましたか?」
「あのさー、そこは『自分で美しいとか言っちゃうんだ。アハハ』って笑う所でしょ?納得されると、こっちが恥ずかしいわ」
「申し訳ございません……」
私はまたひれ伏した。王子のため息と側に座る音がする。
「東の魔女さん、変わっちゃったね。昔はギラギラした目でゴテゴテに着飾って、姫に刺客送るわ、毒盛るわ。自己中の塊みたいな女だったのにさ」
「黒歴史なんで、面前でおっしゃらないでください……」
「黒歴史って、正にだね」
王子が爽やかな笑顔で笑う。
私は前世、魔女だった。
それはそれは悪い魔女。
みんなが憧れる王子を独占したくて、王子の寵愛を受ける姫に対し、暗殺者を仕向けたり、毒薬を仕込んだり、最終的には王子自身に媚薬を盛って既成事実を作ろうとした。
王子はその全てを阻み、媚薬を飲んだふりをして無防備になった私を刺し殺したのである。
刺された時の痛みまでは記憶にないが、それでもお腹に何かが突き刺さる奇妙な感覚は覚えていて、思い出す度に背筋が騒つく。
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