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「ま、槙ちゃんっ!」
「俺にエッチなこと教えたんだから、ちゃぁんと責任とってよ」
ゆっくりと腰を下ろしていく。待ちわびたように、腸壁が飲み込んでいく。
「あっぁっ……これ、ヤバ……」
何度も受け入れたモノだ。
そのときには気持ちよさはなく、無言で受け入れていた。
でも、今は違う。
「あっ、ここ。ここ、きもちい、とこ……」
自ら高めるように腰を振り、見せつけるようにスカートをまくった。
自分の陰茎が震えるさまを見せつける。
「ま、槙ちゃん……っ」
喘ぐ田中に舌なめずりをしてみせた。
腰を振るのをやめ、ずっぽりと奥まで迎え入れる。
田中の手をとり、おへそに触れさせた。
「田中さん、わかる? ここの奥までずっぽり入っちゃってる……」
一緒にお腹を擦りながら、俺はほほ笑んだ。
「田中さんのすごいね。腹の中で、びくんびくん脈打ってるよ。イキそう?」
「槙ちゃんが、煽るから……」
田中は切なげに言った。
今にも達してしまいそうなんだろう。
(それでも、無理矢理腰を動かしたりしないんだ……。本当にどこまでも優しい人……)
俺は覆い被さるようにして、田中にキスをした。
舌を絡め、甘噛みすると、彼は驚いたように目を丸くしていた。
今まで、キスをしたことがなかったからだ。唇を離し、見つめ合う。
「田中さん……好きだよ。俺の中で、いっぱい出して……」
ギュッと抱きしめると、田中も腕を回してきた。と、同時に、奥に射精される。どくどくと、温かいものが流し込まれていくのがわかる。
(幸せ……。気持ちよくって……癖になりそう……)
***
それから一ヶ月後、俺は風俗をやめた。
田中と真剣に付き合うことになり、そうすることを決めたのだ。
(とはいえ、やめることは言ってないんだよな~。やめたって言ったらどんな顔するかな~)
今日は、初デートで、やめたことを告げようと思っていた。
田中に愛されて、変わったことがたくさんある。
自分が好きな、自分でいようと思えたことだ。
髪を伸ばすようになり、好きな女性服を好きなだけ着るようになった。
笑いたいときは笑って、田中とデートするときは好きなときに「好き」と言った。
次第に、人の目が気にならなくなった。
愛してくれる人がいる、そのことが俺の支えとなっている。
今日はお気に入りの白いワンピースと麦藁帽をかぶっていた。
「槙ちゃん~! 待った~?」
後ろから声がして振り返った。
冴えない彼が、こちらへ走ってくる。が、俺はギョッとした。
「なに、その服……」
田中は、あろう事かたかがデートで、真っ白なスーツを身にまとっていたのだ。
しかし、田中はツッコミにもめげず照れ笑いをする。
「へへ……実は、槙ちゃんにプレゼントがあって……」
そう言ってポケットから取り出したのは青色の小箱だった。
(これ……ドラマとかで観たことある。もしかして……)
戸惑っていると、田中が目の前で片膝をついた。
「ちょ! なにしてんの!?」
俺の静止も無視して、田中は小箱を開けた。
中にはダイヤがついた指輪が納められている。
「槙ちゃん、結婚しよう」
田中は、真剣にそう言った。
俺が答えないでいると、田中は早口で話し続ける。
「も、もちろん、性別的には同性になっちゃうから結婚はできないけど……形だけはちゃんとしたくて……それで、槙ちゃんさえよければ、ゆくゆくは一緒に暮らしたいし、将来の伴侶として、僕的には真剣に考えて――」
言葉を最後まで聞かずに、俺は田中に抱きついた。
「大好きっ!」
了
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