逢わせ屋

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
都市伝説『逢わせ屋』 ジンクスとか、学校の七不思議とか、この世には不思議な事がいっぱいあるけれど、国内有数の歩行者数を誇るS町のスクランブル交差点には、『逢わせ屋』という都市伝説がある。 自動車用信号機が黄色になった時、『逢わせ屋』に「逢いたい人に逢わせてほしい」と心の中でお願いするのだ。 そして歩行者用信号機が青になってから目をつぶって横断歩道を歩くと、逢いたい人にぶつかるのである。 大切なのは逢わせ屋を信じる事と、ぶつかるまで目を開けてはいけない事。 昔、逢わせ屋のおかげで運命の相手と出逢えた、という話が出回り、やるだけやってみようという人が増えたが、どうしても怖くなって目を開けてしまう人がほとんどだった。 しかし、目を開けなかった人の多くは運命の出逢いを果たしたのも事実である。 出逢いを果たせなかった者は、誰にもぶつからず交差点を渡りきったらしい。 それが運命の人がいない為か、まだ出逢えないだけなのかはわからない。 その後、この都市伝説を使っている人に当たりに行く当たり屋が増えて、これは下火になったが、今でもまことしやかにささやかれている。 交差点横の交番では、時々迷子を探すのに使っている事もあると言う。 私も試してみようと思ったが、この人混みの中を目をつぶって歩くなんて、どうしても怖くて目を開けてしまった。 本当に逢えるかはわからなかった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!