逢わせ屋

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歪な文字で書かれた懐かしい画用紙を私は眺める。 押入れを片付けていたら出てきた、小学六年の夏休みに作った自由研究だ。私は都市伝説を調べて、一枚の画用紙に纏めたのである。 その時はただ面白いと思っただけだったが、十年経った今、私は今度こそ逢わせ屋にお願いしようと決める。 私は思い立ってすぐにあの交差点に向かった。 電車で一本。十分ほど揺られる。 小六の時は少し遠く感じたあの場所も、二十歳も過ぎた今となっては身近な場所だ。 交差点について、一つ目の青信号を無視し、赤信号になってから、溜まり始める歩行者たちの先頭を陣取る。 今日も変わらずの人の混み様である。 縦方向の自動車の信号がまず変わり、次の横方向の信号が黄色になったタイミングで逢わせ屋に拝む。 逢わせ屋さんお願いします。 兄に逢わせてください。 どうか、兄に逢わせてください。 もう五年も逢っていない兄に私は逢いたくて仕方がない。 歩行者用信号機が青になる。 私は目をつぶって横断歩道を歩き出す。
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