なけなしの

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「……泣くほど嫌?」 「え」 恭介の大きく長い指が、僕の目元をすくい上げる。 そこで初めて、自分が涙を流していた事に気が付いた。 (な、泣くとか……) 自分でもドン引きだ。なんで泣いたんだ。これじゃあ彼だってソノ気を無くしても仕方ない。 「ああ、痛かった?」 指を全て引き抜いて、彼は僕を後ろからそっと抱きしめた。 僕は小さく、違う。と呟いた。 「今日はやめとこうね」 相変わらず優しい声で言うものだから、もう駄目だ。首を頑張って曲げながら。 「嫌だ! 止めるのは、い、嫌……」 「でも」 離れて行こうとする体温を逃すまい、とその身体にすがりつく。 「ぼ、僕、だけは、嫌だ。きょ、恭介のが、欲し ……ゥわッ!!」 力任せに肩を押され、気が付けばその獣の目に射抜かれるように見下ろされていた。 「挿れて? うん、分かった……挿れてあげる」
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