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―――ともあれ。それからも僕にとって彼女は、尊敬出来る先輩なわけで。
変わったと言えば。
その日から仕事の悩みだけでなく、プライベートのことも多少話すようになった、って事かな。
とは言っても当たり障りない事で。まさか月に1回会う男のセフレがいるとか……そんなことは言わないし言えない。
そう言えば、先輩と僕は住んでいるところが近いらしい。
あと彼女はいつも誰よりも早く出社して、遅くまで残業しているってことを知った。
……そんなある日。
「茶九先輩、おはようございます」
「あー、おはよ」
今朝の先輩は心做しか元気が無さそうに見えた。
「あの……どうかしました?」
思わず訊ねて、少し後悔しする。彼女が考え込むように黙ったからだ。
よく観察すれば、顔色があまり良くない上に化粧で隠してはいるが目の下に薄ら浮かんいるのはクマだろうか。
「うん。ちょっと、色々ね。……あのさ、瀬上君。今日仕事終わり空いてる?」
「え? ああ、はい。大丈夫ですよ」
彼女は、弱々しく微笑んで頷いた。
何か相談だろうか。新人の僕にするならば、仕事の悩みではないだろうな……プライベートかな。
……まぁ何であれ、僕でよければ力になりたい。
そんな事を考えながら、仕事に取り掛かった。
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