鶯の涙ほどの

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……そうそう。 初めて抱いた日、あれはもう嬉しくて嬉しくて仕方なかったなぁ。 カノジョにフラれてヤケ酒煽ってたから、危ないなぁって思って声かけたんだけど。 まさかああいう形で進展するとは思わなかったから。 ―――『隣良い?』とかなんかで声掛けて、当然無視されたけど無言の了承とって遠慮なく座った。 そしたらやっぱり機嫌悪くて、やたらと強がるものだから思わず言った言葉に彼は激怒。 『そういうところがカノジョにフラれる原因なんじゃないの?』って。 その瞬間、引っぱたかれて『表へ出ろ』だ。初めて親以外から受けた張り手に、もう興奮しちゃって。 あ、別にMっ気の意味じゃなくて。うん、まぁ多少素質はどっちかと言えば逆かな。Sの方。 ……速攻あの手この手でもう二軒くらい連れ回して、酔い潰してやった。 それからホテルへ連れ込む。 我ながら最低だとは思うけど、仕方ないんだ。止められなかった。 この腕の中にずっと手に入れたかったモノがあったら、誰だって絶対に離したくないでしょ? あ。勿論、お互い初めてだった。 俺の方は仕入れまくった知識と、女の子を抱く時のテクニックをフルに発揮した。 この一晩で全力かけて彼を堕とす気だったから。 ……可愛い声を上げてくれたよ。 まずはとことん優しく、恭しく甘やかしたかった。そうして『男とのセックスも悪くないな』って思って欲しかったから。 ま、そんな訳でここ半年はいわゆる身体の関係、っていうのが続いている。 でも大丈夫。身体の関係があれば、あとは心だけ。 ―――人間のどこに心があるのか知らないけれど。
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