鶯の涙ほどの

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「恭介君ってぇ、カノジョいるのぉ?」 俺の思考は、隣からの鼻についた甘い声で遮られた。 見ればいつ間に割り込んだのか、やたら胸部をギリギリまで露出した女が上気したような顔色でこちらを見上げているではないか。 (その努力は尊敬するけどね) 女の子って言うのは確か、化粧品や服とかにすごくお金も知能も使うのだろう。 だから食事代は男が払え! と恋人に詰められたと言ってた友達がいたな。 そもそも払う払わない以前に俺の好みではない。 とは言え俺には女の好みというものはないかも。 「カノジョかぁ、残念ながらね」 苦笑いで答えれば女の……あー、めんどくさいからトリ美で。なんか鳥っぽい。 彼女は頭を微妙に左右に振りながら、器用な首の動きで傾げてみせた。 「えー、うそぉ。こんなにカッコイイのにぃ?」 「あはは……ありがと」 褒められたのだから一応お礼は言おう。最低限の礼儀だよ。 するとトリ美、なんだか気分が乗ってきたのかやたら俺に触り始めた。 「ねぇ、あたしも彼氏募集中なんだけどぉ」 へぇ。そりゃあ頑張れ。でも俺は募集した覚えは無いけどね。 「恭介、みたいな人。超タイプなんだけどぉ」 なんだけど、なんだよ。あともう呼び捨てされてる。俺は君の名前すら覚えてないのに。 「ちょっと! 恭介君困ってんじゃん」 トリ美とは反対側から別の女……パンダだな。目の縁どりが強烈過ぎて、パンダにしか見えない。 「ハァ!? 困ってないしぃ。相手にされないからって僻まないでくれるぅ?」 「ハァァッ!? あんたこそ! ベタベタベタベタ、必死過ぎんのよぉぉ!」 「キィィィッ!」 「〇△✕□☆#%#*&!!」 パンダとトリが罵倒の小競り合い始めた。 まぁそれはそれで面白いから見守っていたら、男の1人が俺の肩を叩き『すまん』と謝った。 そこは俺が謝られる事はないから、肩を竦めて『こっちこそ』と笑った。 まぁ酒が入ると人間気が短くなるよな。
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