冷徹な王の

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「シャワー浴びてこいよ」 無遠慮にベッドを軋ませて乗り上げて来た無作法者め。 舌打ち混じりに命じると大人しく、再び軋み共にシャワールームに向かって行った。 『』 男(あいつ)がもごもごと無粋なことを口にする。 「はァ? 馬鹿言うんじゃあないよ。僕はもう綺麗にしてきた。余計なこと言わないでさっさと行け」 脇役(モブ)で奴隷の分際で僕に意見するんじゃあない。僕は王だ。少なくても今の君にとってはな。 威圧的にそう吐き捨てれば、しばらくしてシャワールームから水音が聞こえてくる。 ……僕は目をつぶった。 瞼の裏に遮断しきれない光が煩わしい火花のように散る。 心地良いとは思えないBGMが中途半端に耳腔を擽り眉を顰めた。 (こういうのオシャレとか思ってんのか) センスってもんが皆無なんだよなァ。 ま、こういう所に過度な期待はしないし、むしろこの位の低俗さが夢を見るには丁度良いのだろう。 「あー、疲れた」 僕にだって日常がある。 さっき脱ぎ捨てた窮屈な抜け殻を身にまとい、日々息苦しい人間関係を無心で生きる日常が。 『』 ……あァ? なんだもう戻って来たんだな。 ちゃんと綺麗にしてきたのかよ。 なんて聞いてやらない。別に僕はこいつの母親でもなんでもないから。 『』 「ふん、勝手にすれば?」 慣れたものだろ、跪き方はさ。 僕は大儀そうに起き上がり、ベッドの傍らに膝をついた男に向かって片足を突き出す。 「キスして」 それが『よし』の合図だ。 恭しく口付けされる足の爪先。そこからゾワゾワと熱が広がっていく。 僕は小さく溜息をついた。 ―――込み上げる涙を堪えるのに必死だった。
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