埃ほどの

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埃ほどの

僕、瀬上 誠(せがみ まこと)は去年まで学生で、社会に出た事のないガキだと言われながら。それでもどこか自分は出来ると過信していた。 当然大人達の中に入れば色々と自分の力量を思い知らされるわけ。 まぁ平たく言えば理想と現実との乖離に、打ちのめされていたってことだけれど。 ……そして悪いことって重なるんだな。 学生時代から付き合っていた恋人には、ある夜あっさり別れを告げられた。 僕が仕事にかまけて、相手をしてくれないからだってさ。 こっちは必死で目の前の事に食らいついている間に、よそに好い人を見つけてしまったらしい。 神妙な顔での別れ話の後に、SNSで新しく出来た恋人との惚気を見つけた僕の気持ちを考えて欲しい。 ヤケになるのは当然だろう? ま、僕のヤケって言うのは単に酒に逃げる事だったんだけどね。 でもそれが間違いの元だったんじゃあないか、って今ではヒシヒシ感じているよ……。 『彼』と出会ってしまった。
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