埃ほどの

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昔からの悪い癖だ。 怖いこと辛いこと、悲しくても平気な顔をして強がる所。 だから恋人にフラれたのかもしれないな。 結果、僕は女みたいに組み敷かれて見ず知らずの男に始めてを捧げてしまった訳だ。 ソッチにはてんで知識も経験も無いもんだから、無様にも忌々しい男の手ほどきをうけてさ。 ……僕もとんだビッチに成り下がったもんだよなァ。しかも、それが満更悪くなかったものだから。 驚くなかれ、半年も続いちまっている……月に一回のセックスだから、もうあの男には5回も抱かれちまってるわけだ。 あの男……村瀬 恭介(むらせ きょうすけ)は穏やかな男だ。そしてムカつくくらい優しい素振りを見せる。 僕が痛いと言えば文句言わず時間をかけて、欲しいと言えば惜しみなく与えるような奴。 終わった後も、要らんと言うのに後始末を始めて恋人にするように甘いキスを身体中に降らせるんだ。 でも決して自分の事は語らない。 まぁ僕も聞かないけどさ。 連絡先だって知ってるのはLINEだけ。 次の日時は会った日の、帰り際に簡単に約束するだけだから。 もし都合が悪くなったら、の連絡先だけど今まで一度だってメッセージは受信も送信もされていない。 片方のどちらか、または両方がドタキャンすれば成立しない関係。 危ういもんだよな。 ……あくまで身体だけの二人にはお似合いなのかもしれない。
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