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side:泣き虫君
休憩時間、アッシュは休憩室のソファにてうとうとしていた。
ここのソファは開店後だいぶ経ってからロイさんが入れたものだ。確か貰ったとかなんとか。今ではアッシュに大分馴染みあるものになっている。
よくロイさんの呼び出しの中にアッシュをジムに連れていくというものがある。
何故だかさっぱりわからないがジムトレに連れて行って延々と一緒に走らされるのだ。
1人が嫌ならタイガでも連れてって下さい。トレーニングなら喜んでついてくと思います。
しかも大概が仕事前に連れていかれる。ただの嫌がらせとしか思えない。
しっかり鍛えているロイさんと日頃運動をしないアッシュとでは同じ運動量でも明らかにバテ方が違う。ロイさんがケロリとしている横でアッシュはほぼ死にかけているのが大半だった。
そして何とかここまで出勤してきてはこのソファでダウンしているのが悲しいかな日課である。
そんなわけでとても愛着あるものになっていた。
慣れた場所で微睡む時間は何とも贅沢だ。
勿論遅刻しないよう、ケータイでアラームも設置している。準備は万全だ。
心置きなくうとうととしているとカチャリとドアの開く音がした。
頭の片隅で誰か来たのだと悟るが、なかなか覚醒出来ない。アッシュが寝ていようと文句を言う人は……コテツさんなら言うかもしれないが休憩時間なので許される筈だ。
しかし誰が来たのか気になり、顔を上げようとしたところでグイッと上へ顎を掬い上げられた。
「ン……っ!」
急なことに驚いて半開きになった口に熱い舌がねじ込まれる。驚いて引っ込んだままの舌を絡め取られたり、上顎をなぞられる。
「んん……っふ、ぁ」
ゾクゾクとした刺激が走り、アッシュは身をよじるが上手くいかない。首を横に振ってやめさせようとしたが、ガッチリと首の後ろをホールドされていてそれは叶わなかった。
「……っはぁ、」
満足したのか、最後にリップ音を立てて離れていく。やっと唇を解放された。
いったい誰だと言いたいところだが、こんな事をする人は1人しかいない。
「ロイさん……」
非難がましい視線を送るが本人はどこ吹く風といった具合で知らん顔をしている。
「おはよ」
「……おはよ、じゃないですよ」
あのディープキスの一件以来、ロイさんはこうして隙をついてはキスを強要してくるようになった。
さすがに寝込みを襲われたことはなかったが、今この瞬間に寝込みも襲われることを知ってしまった。
おちおち昼寝も出来ない。
ロイさんはペロリと自身の唇を舐める。色白の肌に赤い舌がチロリと覗く。
流石、顔が良いので絵になる光景だ。しかしどこでも構わずキスしてくるのはやめてほしい。
ため息を吐いているとロイさんはそっと耳元に唇を寄せた。
「今日、残ってて」
スルリとアッシュの唇を一度撫でる。それだけ言い残すとロイさんは休憩室を出て行った。
これ残らない方が良いんじゃないか、とは思うものの無視した後の方が怖い。
どうしよう……。
呆然としているアッシュの横でケータイのアラームが間抜けに響いていた。
仕事終わり、それぞれが帰宅して行く中アッシュは未だ悩んでいた。
しかしもたもたしている間にいつの間にか残ったのはアッシュとロイさんだけだ。
それを確認し、ロイさんはニコリと笑う。
あー、逃げそびれた……。
すぐ目の前まで歩み寄ってくるとまた唇を撫でられた。
覗き込まれるのが居心地悪く、顔を逸らすとそれを遮るようにしてキスされる。
「ん、ふ……」
悲しいかな、キスされる事自体には慣れてきてしまった。慣れてはきたのだが、それと感度は別問題だ。
慣れれば平気かと思いきや、慣れるほど過敏になってどうしようもなくなる。
苦しくて顔を逸らすと今度は止められなかった。
「……っはぁ、はぁ」
手の甲で口元を拭い、肩で大きく息をする。
危なかった!もう少しで立っていられなくなるところだった。
アッシュが呼吸を整えている間、ロイさんは何やら思案顔をしている。暫くしてこてりと首を傾げた。
「じゃあ少し変えようか」
何がじゃあ、なんだ。訝しげにロイさんを見上げるとニタリと含みある笑みを浮かべている。
あ、これ詰んだわ。
思わず絶望感に苛まれているとその間に再び唇を塞がれた。
くちゅりと舌を絡ませられるが、特にさっきと大差ない。
変わらないじゃないか、とホッとしたところでいきなり耳を塞がれた。
最初は驚いて身を竦めたものの、次第にその意図が分かってくる。
「ンん゛……っぁ……、」
ぐちゅぐちゅと舌の絡み合う音が直に響くのだ。
唾液の混ざり合う音、舌同士が絡み合う音。そして時折悪戯に歯を立てたり吸い上げたりする音。
あまりに卑猥な音が響いて慌てて塞がれた手を引き剥がそうとするが動かない。
それどころか更に深く絡ませてくる。音を気にしているのを分かっていてわざと音を立て煽ってくるのだ。
それが腹ただしい反面、背筋がゾクゾクするのを止められない。
「……ん、ぅ」
思わず目を閉じると更に感覚が研ぎ澄まされて慌てて目を開いた。
開けた途端つぅ、と頬に熱いものが伝う。泣きたくないのに涙が出るのが鬱陶しい。
苦しい。苦しくて頭がボーッとしてくるのに耳の中に卑猥な音がいつまでも反芻する。
おかしくなりそうだ。
「ぁ……は、」
ロイさんが満足して唇を離す頃にはすっかり腰が抜けて立てなくなっていた。
座り込みそうになる腰をロイさんは片手で支える。
それをさも楽しそうな様子で眺めながらロイさんはアッシュをソファへと誘導した。
「ちょっ、とロイさ……ンぁっ!!」
ベロリ、耳を舐められ電気が走る。
外殻をなぞり、時々歯を立てられる。過敏になった身体には刺激が強い。
「ぁ、ぁ……っ!ロイさ……やめてっ」
「気持ちイイでしょ?さっきからずっとビクビクしてる」
舐められる度にゾクゾクとした刺激が背筋を通る。それに合わせて視界が歪んだ。
直接的な快感とは違い、この刺激を気持ちいいというのかどうかアッシュには分からない。ただただ頭のてっぺんまでゾクゾクさせられる刺激に耐えかねて身をよじった。
「うぅ……っ、違……」
否定し押しのけようとするアッシュの腕を空いた片手で掴む。
「何が違うの」
囁きながら、今度は耳の中まで舌を這わせる。
熱い舌が入り込むと途端に自分のものじゃないような錯覚に陥る。
耳を塞がれて聞く音とは全く違う水音が直に届いた。 時折リップ音を立てられると耳の中に響く。
逃げようともがくがソファに押し付けられてそれは叶わなかった。暴れないよう両手を纏められ片手で押さえつけられる。
「ロイさ、……っァ……!」
「なに?」
アッシュの身体を横向きにし、そこに跨るようにして覆い被さりながらロイさんは囁く。
「もう、耳やめ……」
「ン……やぁだ」
拒否したロイさんは尚もしつこくアッシュの耳を責め立てる。
ジュクジュクと続く卑猥な音に侵されて頭がおかしくなりそうだ。
「やだ……も、やだ……」
「ん、しょうがないなぁ」
ゾクゾクとした刺激に耐えられず泣きが入った頃、ようやく耳を解放された。
「はぁ……はぁ……っ!」
舐められた耳を両手で覆い、肩で息をする。
顔も耳も今までにない程熱かった。
「な、にしてんですか……!」
真っ赤になったアッシュは何とかそれだけを口にした。
「耳ふさぎキス。気持ちイイでしょ?」
コテリと態とらしく首を傾けるロイさんは悪気なくそう言ってのける。
そういう問題じゃない!
だいたい途中からキス関係なかった!!
怒鳴ろうと思うのだが、口がパクパクと動くだけで声にならない。そんなことはお構いなしにロイさんは更に踏み込んでくる。
「今日はもう少し進もうか」
今日はってなんだ。次があるような言い方にツッコミを入れているうちに股間に手を伸ばされビクッと肩が跳ねた。
「え、ちょ……っと!!」
抵抗しようと手を伸ばすと再び両手を纏められ、強引にキスされる。
しかも今度は息もさせないような深いキスだ。
苦しい。
息を吸いたくて口を開く度にどんどん奥へと舌を差し込まれる。
アッシュがえずかないよう、上顎に沿うことも忘れない。
そんな気遣いはいらないと脳内で文句を言いつつも苦しさに喘ぐ。
その間にズボンのジッパーを降ろされていた。
「ひ、ぁ……っ!」
兆したものを握り込まれぶるりと震える。
「ン……っ、ロイさんやめてくださ、」
「んー、でも此処はそうじゃないみたいだけど」
そう言いつつロイさんはグリグリと尿道口を抉るように押し潰す。
痛い。痛いのだけれど散々感度を上げられた身体はそれだけじゃないものも拾ってしまう。
「やだ……っ」
先端だけ揉み込むように扱かれ腰がビクビクと震えた。
すぐ流されるのが自分の悪い癖だと分かってはいたが、結局またズルズルとここまで来てしまった。何とか抵抗しようとするが快感に流されて上手くいかない。
どうしようもなくなった所でロイさんは手を離した。
「ま、でもこれはここまで」
終わってくれるんだとホッとしたところで何故か屈み込まれる。
え、と思った時には既にペニスを咥えられていた。
「あっ……く……ぅ……」
ヌルヌルとした感触に思わず声が上がる。
何で、どうしてと疑問符が浮かぶが強制的な快感に流される。
ロイさんの口の中が熱い。溶かされそうな錯覚に陥る。
ザラザラした舌の感触が気持ちいい。
「フェラは初めて?気持ちイイ?」
「なん……で」
急な展開で完全に置いてけぼりにされている。ロイさんのペースについて行けない。
「だってキス慣れてきたでしょ」
いやいやそれとこれと同関係があるっていうんだ!
「あ……っうんン、」
今度はさっきまで指で押していた尿道口を舌でグリグリと押される。
指の時とは全く違う感覚にガクガクと膝が震える。
やめさせようと頭を押しやるが、咥えるのをやめて口から出しただけで止めるそぶりは見せない。
「ンん、ぁ……!」
それどころか見せつけるように裏筋をなぞり、舐め上げた。頭を押しのけようとするがロイさんの髪がくしゃくしゃになるだけでやめてくれない。
「や、めて!やだ……ァ、ッ」
むしろお返しとばかりにカリ部分をしつこい位咥えて引っ掛けるのを繰り返される。引っかかる度に言いようのない快感が襲う。
「……は、ァ……グスッ……も、やだ」
「やだって言ってるけどさっきからずっとこっち止まんないけど」
「ひ、ぁ!」
人差し指の腹で直接先端に触れて汁を伸ばされる。
グリグリと指の腹で先端をこするのも忘れない。
「んン、……ぁ!」
「声もこの前より良く出てる。気持ちイイんでしょ?」
「うぅ、違ぁ……ン、」
ロイさんは再び先端を咥えると今度は竿部分も扱きだす。
ぬるぬると滑って……おかしくなる。
「ん、ン……はぁ、ロイさ……離して…!」
どうしようもない吐精感を感じて慌てて頭を押しのけようとするが全く引かない。
それどころかロイさんは更に奥深くに咥え込んだ。
「やだ、はな……はなして!も……無理、出る」
喉の奥を締めるように狭められる快感に目の裏がチカチカする。熱い。
「あァ……っ!!ぁ…、」
ビクビクと震えながらアッシュはロイさんの口の中でイってしまった。
「や、も……出たから……い、やだぁ…ァ…!」
管の中まで吸い尽くす勢いで先端を吸い上げれ、アッシュは悲鳴をあげた。
イったばかりの身体には最早毒だ。
肩で呼吸を繰り返すとぐったりとソファへ身を投げ出した。
そんなアッシュにロイさんはあろうことかそのまま顔を近づけると深いキスを仕掛けてくる。
勿論アッシュの精液付きである。
「ん゛ーっ!!!!」
アッシュは渾身の力を込めて身をよじるが、あちらはあちらで腰にも首の後ろにも手を回し全力で封じ込めに掛かってくる。
「ふぅう゛ぅーっ!!」
反射的に齧り付こうとするが、噛み付く前にパッと唇を離された。
「うぇえ……に、苦い……」
苦いのもそうだが、なによりも自分の物を口にしてしまったショックの方が大きい。
両手で口を押さえ、ベッドの上に丸まるとアッシュはボロボロと泣き始めた。
「ばかじゃないの………う゛ぅー…」
アッシュは暫くそうしてグスグスと泣いていたが、ロイさんはその腕を掴み上げる。
「痛った……」
何だか覚えのあるシチュエーションにアッシュは身を竦ませる。グスグスと鼻を鳴らしたままロイさんの方を見上げれば興奮気味にこちらを凝視していた。
「……まだ終わりじゃないよ」
艶っぽい声で囁かれアッシュは目を見開いた。
「はぁ……!?」
まだ何かする気なのか……!
素っ頓狂な声を出してアッシュは再びロイさんを見上げる。
すると彼はニコリと猫かぶりな笑みを浮かべると自身のズボン緩め始めた。
「え、何々……え、」
まさかの事態に完全に思考が追いつかない。疑問符を浮かべているうちにとんでもないものを露出されていた。
「今日は僕も気持ちよくして」
「ひ……っ!!!」
出されたモノはそもそも大きさからして全く別物だ。
自分が短小というわけでは決してない。ないのだが、兆し始めているとはいえ……ロイさんのは明らかに大きい。
今、ロイさんはこれをどうしろと言った……?
ピタリと固まったまま言われた意味を考えること数秒。
「む、無理……!!」
アッシュは怖気づいて後ろに下がった。しかしそこはソファの上。ロクに下がれもせず肘掛け部分にしがみつく。
つまりこれをさっきされたように咥えろということだろう。想像するだけで恐ろしい。
というか、大口を開けるのが不得意なアッシュ的にはそもそも入る気がしない。
「無理?」
「む、無理です」
こてりと首を傾げられ、思わず即答を返す。
「どうしても?」
「どうしても……!」
これはやめてくれる流れかと淡い期待を抱き、アッシュは言われた言葉を復唱する。
ロイさんは少し困ったように目を伏せた後、アッシュの膝裏に手を入れる。
「そっかぁ。じゃあ――」
「え、ちょっ!!!」
そのまま思いっきり膝を引き寄せられ、ソファに転がされた。
完全に股を開く格好である。
「ななな何してんですか!?」
「えー、だって出来ないっていうから食っちゃおうかと思って」
「なんで?!」
さっきと変わらぬ笑みだというのに言われてる内容はとんでもない。
慌てて距離を取ろうともがくががっしりと掴まれていて動けない。
そのままロイさんは前傾になるとこちらへ体重をかけ始める。
膝裏を掴まれているので自然と足が上がってくる。
「ちょ!!無理無理無理無理!」
「それはさっき聞いた」
「だって……!!」
半泣きになるアッシュにロイさんは低い声で唸る。
「わがままばっかり言わないでよ」
急に今までにない声を出されたので体勢も相まってビクリと肩が跳ねる。怖い。
「したくないっていうからやめてあげたんだからさぁ」
冷静に考えてみれば言ってることが押し付けがましいことこの上ない台詞なのだが、半分程パニックに陥っていたアッシュはその矛盾に気づかない。
ただ今までにないロイさんの雰囲気が怖くて固まった。
「だ……って、」
ジワリと涙が浮かぶ。それをニヒルな笑みを浮かべて見下ろしたロイさんはアッシュのズボンに手をかける。
何をする気なのかと首を傾げていたのは一瞬だけだった。肛門部に触れられたことで何をするのか察してしまったアッシュは悲鳴をあげる。
「やります!やりますから!」
「だって出来ないんでしょう?」
いや出来ないけど!!出来ないけども!
出来ないって言ったらこれは掘られる流れでしょ……?!
言えるわけないだろうと半ば八つ当たり気味に脳内で叫ぶアッシュはやはりパニックになっている。
「うぅ……っ」
処女とフェラを天秤に掛ければ――そらもう後者を取るしかなかった。
「や……りま、す」
「そう?」
言質を取るや否や、パッと手を離したロイさんはアッシュを起こすと膝立ちになる。
言わされたのだと気づいた時にはもう遅かった。
次断れば待っているのはロストバージンだ。
それだけは避けたいという一心でアッシュはこの状況に立ち向かった。
とはいえ、一体どうしたらいいのか分からない。
勿論初めての経験である。戸惑うアッシュにロイさんはさっきとは打って変わって穏やかな声で呟く。
「舐めて」
ええい、こうなったらなるようにしかならないとアッシュは意を決してロイさんのモノに手を添える。
緊張なのか何なのかよく分からない震えが起きる。フルフルと震えたままその先端に舌を這わせた。
少ししょっぱいような、変な味がする。決して美味しくはない。
というか、見た目で想像した通り、大きすぎて口に入れるだけで骨が折れる。
ペロペロと舐めるだけの単調な動きに飽きたのか、ロイさんが次の指示を出した。
「さっきしてあげたでしょ。あれ、真似して」
あれ、とは先程経験したテクニックのことだろう。正直びっくりしたのと快感がない混ぜになってあまり詳しく覚えていない。アッシュは見よう見まねで覚えている限りのことをする。
舐めて、先端を吸う。カリ部分に唇を這わせると出し入れした。
――顎が痛い。
アッシュが懸命に奉仕するのを見下ろしつつ、ロイさんは非情にもそれを一蹴した。
「あっはっ、アッシュ君へったくそだね」
やらせといて下手とはなんだ!上手くてたまるか!
思わずカチンとくる。下から睨み付けるとロイさんはほう、とため息を吐いた。
「でもちょっと興奮する」
そう言ってアッシュの頭に手を添える。
次の瞬間、何の予告もなく喉の奥に突っ込んだ。
「お゛、ぇ……」
全く予期せぬ動作についていけず思いっきりえずく。
慌てて頭を後ろに引くとゴホゴホと咳き込んだ。
喉の奥が痛苦しい。
何をするんだと思わずロイの方を涙目で睨むが、当の本人は妖しく笑うだけだ。
それどころかアッシュの口の中へ唐突に親指を突っ込む。
「んぐ……っ!」
「ほら、ちゃんとして」
怯んだところで無理矢理ロイのモノを突っ込まれた。
今度は加減しているらしく吐くすれすれで止めてくる。しかしそれはそれで苦しかった。
多分だが、ディープキスばかりされていたので口の中に異物が入ることに多少なりとも慣れてきたのか吐き気が緩和されている気がする。全く嬉しくない事実だが。
ゆるゆると腰を動かされるとどうすればいいのか分からない。何とか口を開けて 続けているとロイさんはクスリと笑った。
「アッシュ君舌使って」
よく分からないまま、とりあえず挟み込むように舌を押し付けてみる。そのままロイさんにされたように吸い上げた。
「げほ、げほ……っ!」
苦しい。
息苦しさと顎を開け続けていることでいつも以上に唾液が出る。
それが滑りを良くしているらしく、ロイさんは気持ち良さげに息を吐いた。
感じ始めているのか、次第に汁が溢れ始める。
にっっっがい!!!
さっきまでと全然違う味にアッシュは目を見開いた。
え、にがっ!!!
あまりの苦さに口を離そうとするが頭を固定されてそれは叶わなかった。
「何離そうとしてんの」
押さえつけられたまま抗議の目線を送るが艶っぽい笑みを送られる。少し興奮しているのか、いつもより目力が強い。目の下も赤く色づいていた。
ついそちらに気を取られていると、扉の外から足音が聞こえた。
誰かいる。
さっと血の気が引くのが自身でも分かった。
慌てて再度口を離そうと頭を引くが、半分程口を離したところでがっちりと押さえ込まれる。
近づいてくる気配は強くなるのにロイさんは気にする素振りもなくこちらの反応を見ている。
こんなところ見られたら色々な意味で終わる。
苦しくて涙目を浮かべたままロイさんを見上げるが、彼は何やら思案顔をしている。
その顔が完全に何か悪巧みをしている時の顔であるのでアッシュは思わず眉根を寄せた。
ロイさんがにたりとした笑みを浮かべたまま舌舐めずりする。
次の瞬間、ロイさんは固まるアッシュをよそに口の中へ逸物を押し込んだ。
さすがに加減したらしく、えずく手前で止まる。しかし向こう側の気配に耳を傾けるようにしながらもゆるゆると腰を動かし始めた。
「――っ!?」
一体何を考えてるのか分からない。声は出せないままアッシュは目を見開いた。
「――っ!!」
喉奥を突かないようにしながらも時折えずくポイントを掠める。その度に声が出そうになり無理やり飲み下すようにしてやり過ごした。
喉の奥を締めつけるので気持ちいいらしく、落ち着いたのを見計らっては何度もそのポイントを掠める。
苦しい。勝手に涙が流れてきて止まらない。
そのうち向こうに聞こえる気がしてアッシュはやめて欲しいと目線を送るが耳を撫でられただけで止める気配は全く見られない。
足音が扉の前で止まる。
ドアノブがゆっくりと回され――開くことなく元に戻った。
そのまま足音は離れて行く。
それにアッシュが心底胸を撫で下ろした所でロイさんの声がかかった。
「歯、立てないでね」
え、と思った時には既に思いっきり口の中に突っ込まれていた。
「お゛、ぇ!!」
さっきの比じゃない程の吐き気が襲う。しかし喉奥に突っ込まれているので吐くことはなくそのまま飲み下した。
「あー、イイね」
苦しくて口を離そうとするがロイさんはギラギラした目のままアッシュの頭を押さえつける。
どくん、と口の中のものが一回り大きさを増した。
この状況で感じるあたり本当に鬼畜だ。
ズンズンと喉の奥を突かれる度苦しさで目を見開くがロイは自身の快感を追っているので全く気にしていない。
思わずロイさんの腰にしがみ付く。痛みを散らすように爪を立てるがあまり効果はなかった。
「ん、気持ちイイ」
「ん゛んぅ゛!!」
言葉にならないままアッシュが悲鳴をあげる。
「あっはっ、何言ってるか分かんない」
「ん゛ーっ!!!」
それはそうだろう。分からないなら離して欲しい。
苦しい。
ピストンは尚も続き、アッシュの喉奥に押し付ける。苦しくて喉奥が締まるとロイさんは気持ち良さそうに息を吐き出した。
「ん、出る」
小さく告げた直後、喉奥に熱いものが掛かる。
射精してようやく口の中から抜かれた。
「ゲホ……ゲホッ、お゛ぇ……」
あまりに奥だったのでそのまま直接流れていこうとする白濁を手の中に吐き出した。
顎が痛い。口を閉じたいのに疲れすぎて上手く閉じられない。
「こっち向いて」
「い……っ」
髪を下に下げるようにして無理やり顔を上げさせられる。
涙やら精液やらででぐちゃぐちゃのまま、アッシュはロイさんと目を合わせた。
それをロイさんは悦に入った顔で眺める。歪んだ人だとは理解していたつもりだがここまでだったとは思わなかった。ハートでも飛ばしそうな顔をしている。
一通り眺めたあとで直接口元を拭われた。
「よく出来ました」
中指と親指で拭った白濁を伸ばしながらロイさんは満足そうに笑うと額にキスを落とした。
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