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行方不明になって7年経つと、人間は法律上の死亡が認められる。
カズの遺影の横には、古びたノートが置かれていた。葬儀後、荼毘に付す前に、カズのおじさんが俺達を呼んで見せてくれた。
「運動会の前日にね、これだけ見つかったんだよ」
それは、夏休みの絵日記だった。ゴワゴワに膨れたノートは、濡れた後、1頁1頁、丁寧に乾かされ、大切に保管されてきたのだろう。
「知良のヤツ、遥斗君のを、写させてもらったんだってね……」
おじさんは、赤い目で苦笑いした。
促されるまま中を見て――手が止まる。日記は、カズの消えた日付で終わっている。
「この絵……ヒトデかなぁ? ハル、何描いたか、覚えてるか?」
一緒に絵日記を写したヒロが、首を捻っている。
おかしい。俺は、皆が帰った後、あの日の出来事を描いた筈だ。
「ごめん、忘れた……」
呟きながら、俺は思い出していた。ヒトデじゃない。これは――この無数の星形は。
「仕方ないさ。もう7年も経つんだ」
おじさんは、固まる俺の肩に触れた。優しく大きな掌だった。
「もう少し、ゆっくりしていけばいいのに」
久々に現れた俺を、村の人達は温かく迎えてくれた。開いた年月などなかったかのように、俺と朝陽村はまだ――また繋がったのだ。
「駅まで送ろうか?」
15時過ぎ。帰りの列車まで、2時間くらいある。
「いや、ちょっとその辺を散歩するよ」
「そうか……また飲もうな」
葬儀場の玄関で仲間達と別れた。
思い出の場所をフラリと歩く。朝陽小は、隣町に統廃合され、地域の交流センターになっていた。あの頃駆け回ってた校区は、大人の足には余りに狭く、1時間も歩くと行き尽くしてしまった。
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