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ああ、話が反れた。目の前の車椅子の超絶白人美少女の話だった。
なんと、彼女は、目が見えないのだ。気づかないやつは、多分、一生気づかないだろう。彼女がそのための杖を使ってはいないからだ。彼女の”超能力”は、視覚がなくても、苦労はないほど強力だからだ。彼女は、今の世界屈指の超能力者であるといっていいのではないかな。
「しかし、姫さま、あの時とちっとも変わっていないですね」俺が、この女性と会ったのは、1999年夏の小氷河期真っ只中のエドメガロポリスでのことだ。いったい、どれだけ昔の話になることやら。
「どうも、わたしも、彼女のように”時を跳んだ”ようです。気がついたら、ここのベットに横たわっていたわけで」
「そうなんですか」
「おいらが、姫様のケアをしてきたんだよね、けけけ」黒人幼児が笑いながら言った。
ただの生意気なガキんちょではない、超天才にして、彼も超絶超能力者なのだ。名前を、ソニー・リンクスという。ちいちゃな”お姫様の騎士”気取りだ。
ああ、そうそう紹介を忘れた、この車椅子の超絶美少女は、ベアトリス王女。あの欧州、トランシルバニア、ジーベンビュルゲン公国の押しも押されもせぬ本物の王女サマなのだ。これもまた超絶超能力者として超有名だったルーナ女王の遺児である。
「それは・・まあ、ご苦労だったな」俺は、言った。
「で、俺に、何の御用だったんですか」
「お会いしたかったのです、犬神さんに。そういってはなんですが、ご存命だとは知らなかったので」
「まあ、それは、俺も、そうです。王女の言葉をヒントに、その後紀州まで行きましたが、何も手がかりになるものもないままで、勝手にあきらめてしまいました」
「ですから、それは私も一緒なんですから。でも、こうして世界が存続できたのは、犬神さんのおかげだと思うのです。御礼を言います」
「そんな・・すみませんが、どうも、困ったな。悪態をつかれるのには慣れっこなのですが、王女のような方から、言葉をもらうなんて、その、なんとも・・俺は・・困ったな」俺は、タバコを口にしたまま、慌てふためいて言った。「でも、その挨拶を俺にするためだけに、NYまで呼びつけたわけではないのでしょう」
「わかりますか」
「ええ、で、何をお考えなのですか。いや、何か問題でも持ち上がったのですか」
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