狼男だよね

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「それなのですが」ベアトリス王女は、ちょっと困ったように言った。「手伝っていただきたいのです、犬神さん」 「何を、でしょうか。当然ながら、俺にもできないことがありますけど」 「犬神さん、あなたは、高名なジャーナリストなんですね」 「ピュリッツァー賞をもらったことがあるんだったって、おっさん・・このおっさんがねえ、人は見かけによらないもんだ」 「ああ、もう、昔のことなのだがな。何の因果か知らないが、このNYで悪巧みをしていた連中のそれを暴露した記事を書いてね」 「メトセラ計画。金持ちのあのころの世界の支配者の爺様たちが不老不死になって、永遠にこの世界を支配しようとした・・実際にできるかできないかじゃなく、そんな狂った野望を抱いた米の金持ちのカルトな爺様たちの集団の世界支配の陰謀を明らかにして、そいつらを問答無用で刑務所の中に放り込んだんだよな」ソニー・リンクスが言った。 「まあ、な。しかし、それも昔の話なんだ、です。いまさら、何か、また世に出したい陰謀記事でもあるっていうんですか」 「陰謀・・ではありません、犬神さん。必ずしも、陰謀ではありません」 「どういうことです?」 「この世界では、今も”まだ”、ソ連が存在し、アメリカと対立しています」 「今も、”まだ”?」 「”ほかの世界”じゃ、ソ連がコケてロシアって国になっているところが多いのさ」 「”ほかの世界”、なんじゃすりゃあ」 「”ほかの世界”は”ほかの世界”さ、ほかに言いようがねえ」 「だから・・」 「おっさんの頭じゃ理解できないかも知れねえが、この地球には、いくつもの”平行宇宙”があるんだよ」 「”平行宇宙”・・なんだか、どこかで聞いたことがあるような。なんだか、とてもよく似た”世界”がアパートのお隣さんのように、いくつも並んでいるとかいうことか」 「へえ、ただのトップ屋のくせに、よく知っているじゃねえか。そのとおりだよ、そのとおり」 「でも、それは、まあ、学問的に理論的にあり得るとも言うが、所詮はSF漫画のネタじゃないか」 「でも、それはあるんだよ、おっさん」 「妙に自信満々だな、坊主」 「そりゃ、そうさ。おいらそのものが、その証拠だからな」
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