第二章 ひとつ目の本番

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「やっぱりね」 真木さんが私の顔を見て、フッと微笑む。 恥ずかしさに熱くなる顔。 「触っただけで、この反応は、かなり新鮮だな」 くすっと笑う真木さんは、イジワルそうな瞳を見せた。 「俺、女って苦手なんだ。会社ではベタベタさわってくる女にいらつくし。これみよがしで腕にしがみついてきて胸を押し付けてくる女には吐き気がするんだ」 「そうですか」 ゲイの人が女嫌いだっていうのは不思議じゃない。 「でも、なんだろ?朝ちゃんは、違うなー。 触りたくなるし、構いたくもなる。なんだろ?」 首をかしげる真木さんに私の方が言いたかった。私を構いたくなるなんて、どうかしていますって。 手汗をかいて、自分の拳を握りしめていた。段々、呼吸が苦しくなる。 泣きたいくらいに苦しい。 もう、限界だ。
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