第二章 ひとつ目の本番

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いつの間にか真木さんに朝ちゃんと呼ばれていた。 悪い気はしなかった。 むしろ、子供の頃はよくそう呼ばれたから、懐かしくなった。 真木さんの手が知らないうちに私の左側、こめかみの傷に気がつき静かに触れていた。 呼吸が苦しい。触らないで。私の傷は、私だけのものだ。呼吸するのが苦しくて息を荒くして 真木さんの手をはらい、急いで髪の毛で傷を隠した。 「どうしたの?朝ちゃん大丈夫?」 「はぁ。話って、呼び方だけ……ですか?」 一刻も早く車から降りたい。 「うん。そうだったんだけど……」 真木さんの腕が私の後頭部に伸びてきて当たり前のように近づいて来る真木さんの顔。 意識が遠のく気がする。 体に力が入らない。
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