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第一章 理由
★
この世に神様がいるとすれば私は、聞きたい。
なぜ、私は双子なのかって。
双子の片割れ、米田 朝子。
そして、もうひとつの片割れ、米田 歩美。
そっくりの姿をしている私達は常に間違えられた。
実の母親でさえ
「ほくろでもあればねー」と、私達双子の見分けがつかないことを迷惑がっていた。
仲のよかった私達は、高校も一緒だった。姿だけでは飽き足らず頭のレベルも一緒だった。
それだけ似ていれば男性の好みも一緒だった。
私が好きだった憧れのバスケ部の先輩は、いつのまにか歩美の彼氏になっていた。
かなり、ショックだったが、他の女の子と付き合われるより自分と顔が似ている歩美が選ばれた事を誇らしく思った。
ーーー先輩の好みは、歩美や私みたいな顔なんだ。
そう思うと嬉しく感じた。無論、性格の面の先輩の好みが違うから私ではなく歩美が彼女になれた訳だ。誰から見ても歩美の方が明るくて賢い、面白いし、魅力的だ。そうわかっているから素直に諦められた。
でも、さすがに家の中で先輩と遭遇した時には、心臓が口から飛び出すほどに驚いた。
歩美の彼氏なんだから、うちに遊びに来ていても不思議じゃないのだが、とにかく驚いて挨拶するのも忘れていた。
もっと、驚いた事に先輩はトイレのドアの前で遭遇した私と歩美の見分けがつかなかったらしい。
だから……
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