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その後、私と歩美は『姉妹なんだから仲良くしなさい』と両親に仲裁された。
両親には先輩が来ていたこともキスのことも伏せていた。ただ、姉妹で口論になり、歩美が「ムカついたから投げた」と両親にグラスを投げた事を説明したのだ。
怪我をさせたことに対して、歩美は両親からひどく怒られて泣いた。
「私の方が悪いから、歩美を怒らないで」と私は両親に懇願した。
先輩とキスしたのは、もちろん私の意図するところではない。偶然起こった間違いにすぎない。
それでも、私は歩美の彼氏とキスをしてしまった。その事実は、この先も決して消えることはない……。
あの出来事は、お互いの心に大きな傷跡を残して今もなお、その傷が癒える事はない。
それは、私の左側のこめかみに残る縫い痕と同じで、きっと一生治らない。私は、そう思っている。
でも、あの出来事のおかげでいい事もあった。
左のこめかみを見れば私が朝子だとすぐにわかる。私達は一気に見分けがつくようになったのだ。
そうは言っても、あえてその傷を見せる事を私はしたくなかった。
醜い傷痕は、人に不快感を与える。不快感は人を不幸にする。
だから、大抵髪をロングにしてまっすぐにおろしている。これだと風が吹かなければ傷が見える事は無かった。
歩美は、あれから徐々に夜遊びが増え、男関係も盛んになった。両親には、ばれないようにうまくやっているようだが、徐々に派手になる服装や化粧に私は不安を感じていた。
社会人になっても私達の関係は、ギクシャクしていた。フリーターの歩美に派遣社員の私。
金銭的な余裕もなかったから二人とも実家で暮らしていた。
就職に困っていた矢先、会社を経営している羽振りのいい叔父に誘われた。
「朝子ちゃんも歩美ちゃんも、うちの会社に来ればいいよ」
叔父の好意に甘える形、いわゆるコネで同じ会社へ就職した。
私としては、非常にやりづらかった。
でも、正社員になれるなら、あの家を出られるならと、仕方なく選択した道だった。
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