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就職した当初は、美人な双子だともてはやされた。社交的な歩美は、いろんな男性社員から誘われているようだった。
色々、歩美に関する噂も耳にするが、詳しくは何も知らない。歩美と私の間には、未だに目に見えない壁が大きく立ちはだかっているから。
歩美は、働くのが嫌いな子だった。だから早く結婚して専業主婦になるだろうと思っていた。
でも33歳になった今でも、私同様に同じ会社で働いている。
「でさ、聞いてる?」
運転席の真木さんが言う。
「あ、はい」
「俺ってさ、ゲイなんだよね」
突然の真木さんの発言に息をのんで驚いてしまった。
「ね、驚いた?」
驚きすぎて声を失っていた。まじまじと真木さんの横顔を見る。
ゲイって。
確か男性の同性愛者のことだったと思う。
だとすれば、真木さんが女ったらしだなんて噂を一体誰がいいふらしたんだろ?
やはり噂なんか本当に当てにならないものだ。
「でさ、親がうるさいんだ。いい加減結婚しろだのってさ。それだけじゃないんだ。会社の女子もうるさくていい加減うんざりしてる」
真木さんは、眉間に皺を刻んだ。
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