第一章 理由

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就職した当初は、美人な双子だともてはやされた。社交的な歩美は、いろんな男性社員から誘われているようだった。 色々、歩美に関する噂も耳にするが、詳しくは何も知らない。歩美と私の間には、未だに目に見えない壁が大きく立ちはだかっているから。 歩美は、働くのが嫌いな子だった。だから早く結婚して専業主婦になるだろうと思っていた。 でも33歳になった今でも、私同様に同じ会社で働いている。 「でさ、聞いてる?」 運転席の真木さんが言う。 「あ、はい」 「俺ってさ、ゲイなんだよね」 突然の真木さんの発言に息をのんで驚いてしまった。 「ね、驚いた?」 驚きすぎて声を失っていた。まじまじと真木さんの横顔を見る。 ゲイって。 確か男性の同性愛者のことだったと思う。 だとすれば、真木さんが女ったらしだなんて噂を一体誰がいいふらしたんだろ? やはり噂なんか本当に当てにならないものだ。 「でさ、親がうるさいんだ。いい加減結婚しろだのってさ。それだけじゃないんだ。会社の女子もうるさくていい加減うんざりしてる」 真木さんは、眉間に皺を刻んだ。
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