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「それで、頼んでるんだけどね。しばらく俺の彼女として会社でもプライベートでも振舞って欲しいって」
やっと、車に乗った理由を思い出していた。真木さんが私に声をかけたのは歩美と私を間違えたからだ。
だとすれば、歩美に頼みなおした方がいいだろう。
「歩美に頼んでください」
「え? ああ、最初はそのつもりだったんだ。でも、もう俺の秘密をこれ以上もらしたくないから朝子さんに頼みたいんだけど」
秘密か。
確かに真木さんの秘密を私が誰かに漏らさないとも言い切れない。真木さんが私を疑うのは当然だ。
「いいですよ。でも、条件があります」
私は、まっすぐに真木さんへ顔を向けた。
「ああ。なに?」
真木さんは、余裕の笑みをみせる。
「バイト料をください」
「え? 金?」
「ええ、なんの見返りもないのでは、する必要がないので出来ません」
「まあ、そうだよな。お互いにその方が割り切りやすいか」
真木さんは、すんなり私の提案に納得したようだった。
「時給 2000円でお願いします」
「ずいぶんと高くないか?」
黙っていた。
ゲイの隠す為の彼女役なんか、私はやったってやらなくたってどっちでも構わない。
決めるのは、真木さんだ。
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