第19話『デルフィーヌ・ドランスフィールド』

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第19話『デルフィーヌ・ドランスフィールド』

「さて、どうすっかね……」  オーガの死体をアイテムバッグに詰めながら横たわっている少女に目を向ける。  年齢は16、7歳くらいかな。  日本だったらピチピチのJKをやってるお年頃だろう。  スレンダーな体型、吹けば飛びそうな華奢さ。  長い金色の髪を地面に広げて無防備に倒れる姿は精緻な人形のようである。  彼女の装備は見たところそれなりに上質なもの。  いいところのお嬢様かも。 【名前:デルフィーヌ・ドランスフィールド】 【職業:没落令嬢 Fランク冒険者】 【スキル:回復魔法LV2 浄化魔法LV2 光魔法LV4 風魔法LV3 水魔法LV2 雷魔法LV3】  お、おう、職業が悲しい感じだな……。  しかも笑えない方向で。  とりあえず怪我してるし、回復魔法をかけておいてやろう。 「ジロー様。これ、どうしますか?」  どうでもよさそうに少女を『これ』呼ばわりするベルナデット。  冷淡な性格に育ったよな。  誰のせいだ。  俺のせいだろう。 「とりあえず街まで連れて行こう」 「じゃあ、わたしが担いで行きますね」 「ん、頼む」  虐待とかじゃないから。  獣人のほうが力持ちなんだよ。  気絶したままの没落令嬢デルフィーヌを冒険者ギルドに預け、魔物の素材を換金した。  俺たちがギルドを出ると、入れ違いで銀髪の女騎士が駆け込んでいった。 「デルフィーヌは! フィーは無事なのか!」  没落令嬢の知り合いかな?   友達に心配かけるのはよくないぞ。  腹も減っていたので俺たちは普通に宿へ帰った。  夜。  飯を食い終わって寝床に入る。  就寝前のひと時。  いつも通り俺はベルナデットをもふもふしていた。  そういえば自立させようと思っていたけど、結局もふもふさせてくれてるし、解放する理由がなくなってしまった。  彼女には悪いが、解放は俺が元の世界に帰るまで我慢してもらうことになるかもしれない。 「あふぅん……あんっ……んくぅ……」 「…………」  最近、ベルナデットがくすぐったいのとは違う感じの声を出す。  ……うーん、やっぱり、こいつでもふもふすんのはやめようかな。  俺は寝た。  没落令嬢を助けた翌日。 「よし、今日の狩りは終わりだな」 「はい、終わりましたね」 『きゃあああああああっ』  昨日と同じような悲鳴が聞こえてきた。  向かってみると没落令嬢がガーゴイルに襲われていた。  今日もまた一人で森に来たようだった。 「またか」 「またですね」 「同じ過ちを繰り返すとは何と愚かな……」  ビュッビュッ。  ――ギャオオオオゥオゥゥゥッ  聖水をぶっかけるとガーゴイルはくたばった。  没落令嬢は今日も気絶していた。 「……また頼めるか?」 「はい」  ベルナデットに担いで貰って三人で街に帰った。  少女に少女を担がせていた俺は住人たちから蔑みの視線を送られた。  違う、違うんだ……。何が違うかは知らない。  そのまた翌日。 『きゃあああああっ』 「もう、何考えてんだコイツは!」 「ジロー様、今日も担いで行くんですか?」 「……おう」  しょうがないだろ。  見捨てていくのは気分が悪い。  次はいい加減放って帰るつもりだけど。
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