送り火

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送り火

今年も京都五山送り火に来た、しかし京都で仕事が有ったからだが。 1年前に恋人の由佳と、五山送り火を見た事を思い出す。 由佳とは婚約していて、7月には結婚する予定だった、しかし由佳は6月に突然に姿を消した。 それから捜索願いも出して、あちこち探しても見つからなかった。 五山送り火に点火されて明々と燃えて大の文字が見えた。 ぶらぶらと歩いていると骨董屋が有り、何気なく中に入った。 ふと、赤い玉に目が止まった。 これは何かと見ていたら店主らしき爺さんが声をかけてきた。 「お客さん、これは五山送り火の日にしか店に並べねぇんだ、亡くなった人に会えるんだ」 「そうなんだ、これをどう使うんだね」 「川に放り込むだけさぁ、無料でええからね、効果が有れば一万円後払いだょ」 私は赤い玉を買って、フラフラと鴨川に向かう、そして川に赤い玉を落とした。 すると川の中からにゅっと細い手が出て土手に手を付いた、続いて水面に顔が現れた。 「由佳」 何と由佳が現れた。 「由佳、やはり死んだのか」 私は由佳の両手を握り、引き上げた。 確かに由佳だ、ワンピースを着ている。 「ごめんなさい、あれから家族に内緒で一人で旅行に行き、沖縄に行った時にフェリーに乗り海を見ていたら、背後から誰かに押されて海に落とされて死んだの」 由佳は怒りで震えていた。 「ごめんなさい、私の事は諦めて」 由佳は川に飛び込んだ。 夢を見ているのかと思ったが、由佳を抱いてシャツは濡れている。 私は由佳を諦める事にした。 骨董屋に行き一万円を渡す、そして京都を去った。 彼が店を去り、入れ違いに店に入った女が居た、由佳だった。 「ありがとう、彼より金持ちの御曹司を見つけて、婚約破棄したかったけど、そうしたら殺されそうで、前の彼女も別れを切り出したら、彼が暴れだして警察沙汰になったそうだし、彼は骨董好きだから策を考えて成功したわ、ありがとう」 骨董屋は札束を握り微笑んだ。
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