夕涼み

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夕涼み

私は、明日に結婚を控えて、今日が実家での最後の夜だ。 夕方、庭に夕涼み用の縁台を出すと近所の子供達が集まって来た。 母はスイカを切り持ってきた。 子供達がスイカを手に取ると、たちまち皿の上のスイカは無くなった。 「僕のスイカが無いよう」 「あれっ、おかしいわね近所の子供は8人だよね」 母が子供達を見回して人数を数えたら9人居た。 しかも皆知っている顔だが。 「おかしいわね」 私が仕方なく自分のスイカを、その子に渡した。 「嫁に行くな」 その子が叫んだ。 「えっ」 その子は泣き出した。 「行くなと行ったら行くな、お前が病気の時も助けた、父親の会社が倒産しかけた時も助けてあげた、また一緒に遊ぼう」 「あなたは、まさか座敷わらし」 その子はスイカを持ったまま外に駆け出した。 残りの8人の子供たちも、知っている子だけど名前は知らないと言う。 そう言えば、私が子供の頃に一人で寂しい時に、よく一緒に遊んだ子供が居た。 しかし、すぐに座敷わらしの事は結婚式や何だかんだで多忙で忘れてしまった。 私が結婚してから、お父さんの会社が倒産してしまい、私の旦那様は二代目を継ぐはずだったのに失業してしまった。 私は働きに行く決断をした、生活費を稼がなくてはならない。 その時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。 私が玄関の扉を開けると、この前のスイカを、あげた男の子が立っていた。 「やっぱり、お姉ちゃんが好きだから助けてあげるよ、ありがたく思え」 「あなたは座敷わらしなの」 「やかましい、イケメン座敷わらし様だ」 そして家の中に入ってきて姿が消えた。 それから旦那様は資金繰りがつき起業したら、トントン拍子に業績が上がり私もほっとした。 それから生まれた娘は、いつも誰かと楽しく話をしている。 きっとイケメン座敷わらし様が私たちを守ってくれているのだ。
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