第4章 平穏と、綻びと

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     *  暑さのせいか、こびりつくような気怠さが全身を包んでいる。  帰宅後、食事を取る気にもなれずにぼんやり天井を眺めていた、そのときだった。  不意に携帯電話が震え、ちらりとテーブルを見やる。画面に表示された名前を見て、ますます気が滅入っていく。  ……このところ、あからさまに連絡が増えている。はっきり言って迷惑だ。着信履歴に残っている名前は、すでに真由よりもこの人のほうが多い。  先日は、真由と会っているときにかかってきた。ごめん、と謝りながら電話に出た俺を、真由は見るからに困惑した顔で見つめていた。  誤解を招く行動は避けたい。だが、職場の人間を相手に無下な対応を取るのは、さすがにためらわれてしまう。  時刻は午後十時を過ぎている。  うんざりしつつも、携帯の通話ボタンをぽちりと押した。 「……お疲れ様です。どうしたんスか、新崎さん?」  電話越しに、職場の先輩は浮かれた声で喋り始めた。  適当に相槌を入れながら、さっさとこの電話が終わってくれればいいと思った瞬間、どっと疲れが噴き出した。
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