第1章 神様と、私と

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 その後は、スタッフが会場内から下げてきた食器やグラスを片づける裏方の仕事を任された。  私の心をベッキリ折りかけた〝ちょこふぉん事件〟の犯人・新崎さんは、裏方の仕事中、『ごめんね、今日からの新人さんだったんだね』と丁寧に謝ってくれた。それすら判別がつかないくらいに目を回していたらしい。 『本当なら半日程度の研修を受けてから業務にあたってもらうんだけど、今日はものすごく忙しくてね。研修を組んでる余裕が全然なくて、それですぐに業務に就いてもらうことになったんだ』  忙しさの波が過ぎ去った頃、新崎さんはそう説明してくれた。  明日の午前中に改めてちゃんと研修するからね、と笑顔で告げられ、ああ、どうやら辞めずに済みそうだと心底ほっとした。  パーティーが始まって以降、忙しく会場内とパントリーを行き来するスタッフたちの中に、さっきの〝都築さん〟がいるかどうか気になった。隙さえあれば出入り口を眺めていたものの、結局、その日もう一度彼の姿を見ることはなかった。  てきぱきと無駄のない動きでサービスを行っているのは、大半が私と同じアルバイトなのだと新崎さんに聞かされた。驚くと同時に、なんだか皆、自分とは違う世界の人みたいに感じられてしまった。  ……とはいえ、私が彼らと同じ仕事を任されるようになるまで、それから一ヶ月かからなかったのだけれど。
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