フライング

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フライング

家が隣なのに気づいたのは、2年前の春だった 「もう何度目だよ!」 突然の怒鳴り声に驚いて、泣きそうになりながら外に出ると、 新しく建った家の前に、きみがいた あの頃のきみは、いつもイライラしてて、ぼくは、きみが、恐くてしかたなかった 「お前、確か隣の…、名前、なんていうの?」 「え、えっと…」 「そんなにびくびくするなよ、さすがに理由もなく、怒ったりしないって」 「ふーん、え?じゃあ、同い年じゃん」 「野球好きなの?僕もだよ」 正反対だと思っていた僕らは、話してみると、意外なほど似ていて、 すぐに、昔からの知り合いみたいになった 「学校まで走っていこうぜ!」 朝も一緒、 「今日はサッカーにしよう!きみが負けたら、家の手伝い、代わってね?」 休み時間も一緒、 「宿題、先に終わらせたほうが夕飯のおかず、多くなるらしいぜ!」 帰ってからも一緒、 あまりにも一緒にいたから、きっといつのまにか、忘れていたんだ どちらが、自分なのか 僕らはもともと、別々の人間だってこと 全てに、始まりと終わりがあること
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