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さて、そんな美佳の最近の悩みは、響野蒼月になれないことだった。響野蒼月というのは彼女のペンネームで、そのままヒビキノソウゲツと読む。一度は、blue moonだからブルームと読ませる、みたいなややトリッキーな読みも考えたものの、なんだか陳腐だと思ったのでやめた。他にも、羽月や紅月、光月などの候補があったが、一番「蒼」がしっくりきたのでこれに決定した。自分の作風にもなんとなく合っている気がしたのだった。
決定するのに散々時間をかけたせいか、彼女はひどくこのペンネームを気に入っていた。だから、美佳にとって響野蒼月であれないことは苦痛であった。
響野蒼月は、美佳にとってペンネームである。とはいえど、美佳はプロの作家ではない。ただネット小説投稿サイトに作品を載せているだけの、普通の中学生である。文才も、お世辞にもものすごくあるとは言えない。だから、その中でも特に人気が付くわけでも無く、時々読んでくれる人がちらほらいるくらいだ。しかし、美佳はそのような現状に落ち込むことも、自分の才能の無さを自覚しきっぱり諦めることも無かった。
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