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人狼ゲームⅡ
「……ん……」
目覚めたのは、薄暗い、灰色の部屋の中。
コンクリートの床に横たわっていた俺は立ち上がると、ある光に吸い寄せられるように歩き出した。
「……どこだ、ここ……」
部屋の真ん中に円テーブルがあり、その中央はモニターのような丸い画面になっていたが、そこには何も表示されていなかった。ただ静かな明かりが、俺のぼさぼさ頭と血色の悪い顔を照らし出している。
「……俺は、家でパソコンに向かってて……。どうしたんだっけ?」
何だか頭がすっきりせずに、視界がぼやけて見える。小学生の頃に受けた全身麻酔が終わった後の、気持ちの悪い感じに似ていた。
「……そうだ。確か、画面に変なゲームが表示されて……急に気を失ったんだよな」
少しずつだが視界が晴れていき、俺が辺りを見回した時、テーブルのモニターが突然強い光を放った。
「うわっ……!?」
いきなり襲った眩しさに目を細めつつ、モニターに視線を落とした瞬間、俺の動きが止まった。
『貴方の役職は――』
表示されたのは、一枚のカードだ。昼下がりの平和そうな村を背景に、何故か昔の俺によく似た子供が立っている。
「……」
この絵が何を意味するかは分からないが……何故だか、嫌な予感がした。俺の記憶の深い所を抉られるような……お前はこれから地獄を見るんだぞ、と言われているような。
「……これって……くじら、か?」
絵の少年の目元には、影が落ちていた。潮を上げるくじらのようなシルエットだ。
『貴方はこの役職に従って、人狼ゲームに参加する必要がある。そのためには会場である人狼ルームに行かなければならない』
俺の背後で、ピピッ、という音がした。振り向くと、そこには、さっきまでなかったはずの一枚の鉄のドアがある。
ちらりとモニターに目をやった。
『人狼ルームは、この先にある』
この先に、人狼ゲームの会場が……。
俺はごくりとつばを飲み込んだ。ここがどこかを知るためには、まず人を見つけないといけない。先程から感じていた嫌な予感を振り払うように、錆びたドアノブに恐る恐る触れる。
『人狼ゲームはルームで行われる。貴方の役職は大事な役職。大事でない役職など存在しない。故に、貴方は生き残る必要がある』
先の内容まで読んで、俺は視線を離した。
ドアノブは固く、もう何年も開かれていないような古い扉だ。その扉の向こうから、何人かの話し声が聞こえて来た。
『貴方は生き残らなければならない』
ドアノブは、金属音を立てて回った。
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