人狼ゲーム。

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人狼ゲーム。

 カタカタカタ……。  暗い部屋の中に、キーボードを叩く音だけが響いている。  カタカタカタ……。  時計の針は夜中の12時過ぎを指していた。  夜空は黒く淀み、月も星も見えはしない。 カタカタ……カタ。  滑るような動きでキーボードを操った指は、ふと動くのをやめた。 「……人狼ゲーム……?」  突然、画面に表示された赤い文字に、俺は戸惑いを覚える。こんなゲームをダウンロードした覚えはない。第一、ゲームを立ち上げてもいないのに、何故自動的に開かれたのだろう? 「……」  怪しいアプリかもしれない。一種の詐欺か何かなのかもしれない。だが、そのタイトルに、血文字に惹かれるように俺は画面をクリックしていた。 ――『ようこそ、人狼ルームへ』―― 「人狼ルーム……」  聞いた事がなかった。オンラインゲームの類はしない方だ。ルームというくらいだから、皆で集まって何かをするのだろうか。 『貴方には“人狼ゲーム”に参加して頂く』  流れるように次から次へと現れる血文字に、俺は何故か、背筋がゾクッとするのを感じた。 『人狼ゲームのルールは、通常と同じ。貴方ならば知っている。貴方ならば導き出せる。貴方ならば生きられる。生き残れる』 (生き残れる……?)  人狼ゲームのルールにはあまり詳しくない。生き残れるとは、どういう意味だろう? 『今から貴方をルームに招待する。そこで、貴方には人狼ゲームを受けて貰う。人狼に食われてはならない。正体を暴かれてはならない。死んではならない。生き残らなければならない』  赤黒い文字が次々と、現れては消えて、消えては現れを繰り返していった。黒い画面を目で追ううちに、俺の意識が徐々に遠い所に離れていく。 『貴方は生き残らねばならない。その資格があるのだから。何故ならば貴方は選ばれたのだから。選ばれし者はもう既にかかっている。人狼症候群に蝕まれている』  頭がくらくらする。暗くなってゆく視界の中で、赤い文字だけが目に焼き付いて離れなかった。 『貴方がたは選ばれし者だ。人類の要だ。人狼に負けないため、己として勝ち残るため、己が己であるため、貴方がたには戦う事を強要する』  俺の身体は椅子から滑り落ち、冷たいフローリングの床に勢い良く張り付いた。飲んでいたシェイクに俺の手が当たって、零れたシェイクで真っ黒な画面が汚れる。赤いシェイクが鮮血のような文字を更に赤く染めた。 『検討を祈る』  そう表示されたのを最後に、俺の意識は完全に途絶えた。
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