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 聖はそう言うと、不機嫌そうに腕を組んで目を閉じた。  その様子をバックミラーで見ながら、真壁は心配そうに顔を歪める。  聖はいつも、何でも自分一人で解決しようとする。  そんな彼に、真壁は長い事付き従っている。    我ながら、聖に最も信用されている部下だという自負があるが……だが、信用ははされていても信頼はされていない気がして悲しいし、なさけない。  もっと、自分を頼って――――叶うならば、もっと甘えてほしいと思う。  分不相応な悩みかもしれないが、真壁は聖に頼られたいのだ。  それなのに、今回の一件でも、全く聖の力になれない自分に嫌気が差す。 (オレはいつも、聖さんが苦しむと分かっているのに……ホテルへと送り迎えをするしか脳がない役立たずだ。どうしたらいいんだ――)  今回の取引の相手は、曲者(くせもの)で信用できないと、普段から聖が嫌っていた荒潮編集長の山舗だ。  曲者だろうが嫌いな相手だろうが、ジュピタープロの為……というより、ユウの為に、聖は人身御供になる気だろう。  そう思うと、真壁は心が捩じ切れるようだ。 「聖さん――――山舗編集長、どうにかなりませんか? 金なら、オレがあと幾らか個人で用意できますが」 「……カネじゃあ、黙りそうがないからな……」 「でも――」 「心配すんな。あの野郎はセックスの時に妙な道具を使いたがるもんだから、こっちはそれが面倒で避けていただけだ」 「……」  何も言い返せずに黙り込む真壁に、聖はバックミラー越しにフッと苦笑する。 「そんな顔をするな。オレがイジメているみたいじゃないか」 「聖さん――あの、ユウさんは……」  この事を知っているのかと言いかける真壁に、聖は小さく首を振る。 「何も、あの子には言うな」 「でも、元々ユウさんが、勝手な行動を取った所為でこんな事になったんですよ? 警護も手薄になるから、台湾では決して外出しないでくれと、オレは言っていたのに」
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