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真壁の苦言に、聖は小さく首を振って答えた。
「違う。オレがどこぞで買った恨みが元で、こんな事態になったんだ。お前も、あの手紙を見ただろう? ユウはオレのせいで、こんな不愉快なゴシップの餌食になったんだ」
『ゲイのミュージシャン、深夜の御乱行!? 長く地下に潜っていたのはヤバイ病気療養の為か? 麻薬中毒の噂もあるY氏を巡る真相!! 』
そんな、低俗なネタに……ユウの名前が穢された。
聖はその事が、一番許せない。
「オレの所為で……こんな事になったんだ。可哀想に……」
険しい表情になる聖を慰めようとしてか、真壁が取りなすように言葉を挟んだ。
「でも、今は――――LGBTを差別してはならないという世界的風潮ですから、海外の影響を受けやすい日本でも、ゲイは露骨に差別はしないですよ。却ってそんな真似をすれば、世間からバッシングされての大炎上が待ってますから」
「ああ……そうだな」
「ですから、ナモ公国から帰国して、ユウさんが男性の恋人がいる事をカミングアウトしたことも、おおむね世間では好意的に取られています」
「それは良かったと思っている。一昔前だったら、大変な事態になるところだ」
時代の潮流は、こちらにとっていい方に流れている。
むしろ、堂々と同性の恋人がいることを――――現在トップ・モデルであり、そして元アイドルTriangleの一員であった零と、孤高の歌手と名高いユウが、じつは恋仲だというのを公表したことは、とても正直で勇気のある行動だと絶賛された。
だが、やはり中には批判する者もいる。
――――気持ちが悪い、夢が壊れた、etc.……。
そういった声は表に出ないように、聖は各方面に手を打っていたが。
「しかし、零以外の男と一緒の場面をスクープされたのは、二人の『純愛』を盾にして、世間の反応を好意的になるよう誘導していただけに痛手だ。誰でも構わず尻を振るようなゲイだと思われては敵わない。その前に、火消しは必要だ」
「聖さん――でも……」
「この一件は、オレの身から出た錆だ。落とし前は付ける」
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