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 彼の名は、天羽明。  現在は俳優を生業にしているが、二年前まではTriangleのリーダーだった男である。  ユウが頼った人物は、かつて零と同じアイドルグループの一員であった。 「――――誰かと思ったら、ユウさんじゃないですか! 」  明は、フードを目深にかぶった人物の正体を知るや否や、驚きの声を上げた。 「どうしてこんな場所に? っていうか、何でオレに? 」 「……すまない。少し、話が聞きたくて……」 「話し、ですか? ああ、コッチにどうぞ。今は誰も来ませんから」  明はそう言い、稽古場から少し離れた事務室へユウを招く。  そうしながら、気遣わし気に明はユウを見遣った。 「あの週刊誌、大丈夫でしたか? 」 「うん……」 「社長、大激怒していたでしょう」  明は苦笑しながらそう言うと、ポットのお茶をカップへ注ぐ。  現在、明はライジングプロを離れ、ジュピタープロダクションへ移籍している。  理由は簡単だ。  ライジングプロはアイドルやモデル業界に強いが、俳優業に関しては、ジュピタープロの方が格上で、業界に強力な権力を持っているからだ。  海外の映画業界にも太いパイプがあり、度々ジュピターは準主役級の役を勝ち取っている。  ならば、アイドルを辞めて俳優として活動する事を希望していた明としては、迷う事なくジュピタープロを選ぶのは自然の道理だった。 「どうぞ」 「ありがとう」  差し出されたカップを受け取り、ユウはモジモジと下を向いた。  普段、引き籠っているユウである。他人と会話するのは苦手だ。  だがしかし、訊きたい事はしっかりと口に出さねば。 「その! 」 「あのっ」  セリフが同時に被り、ユウは慌てて「先にどうぞ! 」と言ってしまう。
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