3

5/13
前へ
/231ページ
次へ
 その様子に、明はクスリと笑った。 「はは、ユウさんは相変わらずですね」 「? 」 「今や、ワールドワイドな活躍じゃないですか。三大ドームツアーに、先月は台湾公演まで成功させて……でも、全然偉ぶらなくて、逆にオレは驚いていますよ。芸能人なんて、みんな虚栄心の塊じゃないですか。売れる前はADにもヘコヘコしていたくせに、ちょっと売れると――」  明はそこで言葉を切り、ふぅと溜め息をついた。 「ああ、オレの方はどうでもいいですね」 「何かあったのか? オレでよければ愚痴くらい聞くぞ」 「いえ、後輩がちょっと……それより、ユウさんの方ですよ。こんな場所に来て大丈夫なんですか? 真壁マネは知っているんですか? 」 「ううん。ただ、明がここの稽古場で舞台の稽古をしているって、前に零から聞いていたから……直接来たんだ。急で悪かったな」 「いえ、そんな。こっちは、アイドルやっていた時より時間があるくらいですよ。いつでも、気軽に訪ねて来てください」  そう言うと、明はニコリと微笑んだ。  しかし次に、ふと眉をひそめる。 「ユウさん、ネット観ました? 」 「ネット? 」 「テレビの方は騒いでませんが――――多分、事務所の力で抑え込んでいるんでしょうが、ネットの方は炎上してますよ。ユウさんのアンチ派と擁護派で、かなり大激論になってます。さすがにSNSは、いくらジュピタープロでもカバーできないんでしょうね……」  明はスマホを取り出して一瞥すると、嘆息してそれを置いた。  そうして、机の上に積んだままになっている件の週刊誌をチラリと見る。 「――――結局、やっかみ(・・・・)なんでしょう。ユウさんは、気にしないでください。大体、この写真の男も、炎上商法狙ってる芸能人崩れに違いないですよ。本当に災難でしたね」 「そうだ、その男について訊きたいんだ」  ユウはそういうと、グイッと身を乗り出す。 「お前、コイツに見覚えはないか? 」
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加