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その様子に、明はクスリと笑った。
「はは、ユウさんは相変わらずですね」
「? 」
「今や、ワールドワイドな活躍じゃないですか。三大ドームツアーに、先月は台湾公演まで成功させて……でも、全然偉ぶらなくて、逆にオレは驚いていますよ。芸能人なんて、みんな虚栄心の塊じゃないですか。売れる前はADにもヘコヘコしていたくせに、ちょっと売れると――」
明はそこで言葉を切り、ふぅと溜め息をついた。
「ああ、オレの方はどうでもいいですね」
「何かあったのか? オレでよければ愚痴くらい聞くぞ」
「いえ、後輩がちょっと……それより、ユウさんの方ですよ。こんな場所に来て大丈夫なんですか? 真壁マネは知っているんですか? 」
「ううん。ただ、明がここの稽古場で舞台の稽古をしているって、前に零から聞いていたから……直接来たんだ。急で悪かったな」
「いえ、そんな。こっちは、アイドルやっていた時より時間があるくらいですよ。いつでも、気軽に訪ねて来てください」
そう言うと、明はニコリと微笑んだ。
しかし次に、ふと眉をひそめる。
「ユウさん、ネット観ました? 」
「ネット? 」
「テレビの方は騒いでませんが――――多分、事務所の力で抑え込んでいるんでしょうが、ネットの方は炎上してますよ。ユウさんのアンチ派と擁護派で、かなり大激論になってます。さすがにSNSは、いくらジュピタープロでもカバーできないんでしょうね……」
明はスマホを取り出して一瞥すると、嘆息してそれを置いた。
そうして、机の上に積んだままになっている件の週刊誌をチラリと見る。
「――――結局、やっかみなんでしょう。ユウさんは、気にしないでください。大体、この写真の男も、炎上商法狙ってる芸能人崩れに違いないですよ。本当に災難でしたね」
「そうだ、その男について訊きたいんだ」
ユウはそういうと、グイッと身を乗り出す。
「お前、コイツに見覚えはないか? 」
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