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 ユウの質問に、明は男らしい眉を訝し気にひそめる。 「コイツ――って、この赤い髪の男ですか? 」 「ああ、そうだ」 「う~ん……。ちょっと画像が荒くてよく分からないですね。目にもボカシが入ってますし――」  そう言うと、ユウは見ていて分かるくらいに肩を落とした。 「そうか……」 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」  何だか、ガッカリするユウが気の毒になってしまい、明は慌てて声を上げる。 「わざわざオレの所へ来たくらいですから、ユウさんはこの赤髪に関して、何かオレにアテ(・・)があったんじゃないですか? 」  すると、ユウはコクリと頷いた。 「うん」 「だったら、その辺を詳しく教えてください。同じ事務所になったんですから、出来るだけオレも力を貸しますよ」  ユウは、ジュピタープロの社長である御堂聖の息子だ。  御堂の、ユウに対する溺愛っぷりは業界でも有名である。  芸能界に強い権力を持つ社長の愛息子に、恩を売っておくのは決して悪い事ではない。  しかし明は、そんな損得抜きにしても、ユウに協力したくなった。 「社長には秘密にしたいなら、黙っておきますから。だから、オレに話してください」  明がそう言ったところ、ユウは少し安心したように微笑んだ。 「ありがとう」 「い、いいえ、そんな……ユウさんは、零の大切な人ですから。それなら、元メンバーのオレにとっても他人じゃないですし。協力するのは当たり前ですよ」  ユウの、どこか浮世離れした天女のような微笑みに、明はドキドキしながらそう断言した。  するとユウは、カップのお茶にジッと視線を注いだまま、おもむろに口を開く。 「じつは、今――妙なメモに振り回されているんだ」  そう告げると、ユウはポケットから(くだん)のメモを取り出し、明へ渡した。
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