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「これだ」 「……? 読んでも良いんですか? 」 「ああ」  その言葉に、躊躇いながら明はメモを開いて見る。  そして、彼は直ぐにサッと青ざめた。 「なっ! 何ですかこれは!? ユウさん、すぐに社長や真壁マネに打ち明けた方がいいですよ。こんな、卑怯な――」 「そんなの、どうでもいい」  ユウはあっさりとそう言うと、問題は――と続けた。 「このメモが、オレの近くで出て来た事だ。一回目は、楽屋。二回目も楽屋で、しかもオレの台本に挟んであった」 「それじゃあ、ユウさんの関係者がアヤシイという事ですか……」 「ああ」 「でも、それなら尚更……社長に相談して対策した方がいいですよ。今はメモで済んでますが、これがいつ実力行使に変わって凶行に走るか分かったもんじゃない。刃物でも出してきたら一大事だ」  明はブルリと震えて言うと、深刻な顔でユウを見る。 「このまま一緒に、社長の所へ行きましょう。今日の稽古は早退すると断って来ます」  するとユウは、首を振った。 「いいや、それはダメだ。オレは社長に迷惑を掛けたくないんだ。あまり、事を大きくしたくない」 「しかし! 」 「声が――」 「え? 」 「オレは、この赤毛の顔は覚えていなかったが…………声は(・・)、聞き覚えがあるんだ」 「声? 」 「オレは、コイツの声を、以前確かに聴いた事がある。元々オレは、他人の容姿や名前は興味がないから覚えもしないが、声だけは忘れない」  台湾でこの男に声を掛けられたが、これは初めてではない。  確かにその前にも、ユウはこの男の声を聴いた事がある。
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