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 では、何処で聴いたのか?  記憶を手繰り寄せて、ユウは一つの答えに辿り着いた。 「オレ……数か月前ナモ公国で開催されたミュージック・ヒット・ザ・ジャックポッド(MHJ)に出演したんだけど、それは知ってるか? 」  ユウの質問に、明はプッと吹き出して答えた。 「知ってるかって……そんなの、当たり前ですよ! オレと美央は、テレビとネットに釘付けだったんですから。確か、その前日にファッションショーの会場でクーデター騒ぎがあって、零のランウェイがお蔵入りになってしまって――――それもあったから、MHJも開催されるかどうかと不安で不安で……いったいどうなるのか、日本にいるファンは皆とてもハラハラして見てましたよ」 (※くわしくは『キラワレモノ』をご覧ください) 「ファン? 君たちが? 」 「オレも美央も、ユウさんのファンの一人ですよ。現代のセイレーンと讃えられるユウさんの本物(・・)の歌声は、パフォーマンス重視で構成していたオレたちTriangleに、解散を決めさせる切っ掛けにもなったんですから」  思いもかけない告白に、ユウはびっくりした。 「え!? オレのせいでTriangleは解散したのか? 」 「ははは……まぁ、皆それぞれ、本当にやりたかったことはバラバラでしたからね。オレは元々子役上がりで、いつかまた役者をメインに活動したいと思っていたし、美央は将来は脚本がやりたかった。そして零は、オレ同様に元々子役モデルで芸能界デビューしていたから」 「そうだったのか」 「ええ。事務所の方針でアイドルを結成して――――それはそれで楽しかったし充実していたけど、将来はそれぞれ希望する道が違っていたんですよ。で、これからどうするか何となく考えていた時に、ユウさんの歌を聴いてしまった」  ふぅと息を吐くと、明はスッキリした様子で続ける。 「オレたちは、本物(・・)の歌声を聴いてしまった。とても、敵わないと思いましたよ。だから、三人ともTriangleには未練もなく、卒業する事にしたんです」  ニコリと笑って明は言う。 「おかげで、今はとても充実しています。オレは役者が、やっぱり肌に合っているようだ」
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