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   ◇ 「そうですか……それじゃあ、この不気味なメモはミヤビが……」  明がそう呟いたところ、ユウはブンブンと首を振った。 「いいや。何回か打ち合わせをした相手だから、さすがにオレもヤツの顔は覚えている。台湾で抱き付いてきた男は、ミヤビじゃない」 「? 」 「ミヤビじゃないが、声はとにかくミヤビに似ているんだ。だから――――もしかして、あいつには兄弟がいるんじゃないのかと思って」  ユウの指摘に、明は少しのあいだ逡巡し……そして、ハッと目を見開いた。 「そういえば! 会った事はないですが、ミヤビには双子の弟がいるって聞いた事があります。二卵性双生児だから、背格好や顔はそんなに似ていないけれど、声だけは、よく似ているって……」  明の答えに、ユウは確信したように頷いた。 「それじゃあ、オレと写真を撮られたのはまず間違いなく、そいつだと思う。ミヤビか、その弟の連絡先は知っているか? 直接サンライズプロに問い合わせてもいいんだが……そうなると、即、ジュピタープロの社長(御堂聖)に筒抜けになっちまうからな。だから、明の所に来たんだ」  Innovativeは、明と同じサンライズプロに所属していた。  現在は、明はジュピタープロへ移籍しているが……Innovativeは元々Triangle(トライアングル)のバックバンドだったのだし、如才ない明ならば今も付き合いがあるだろうと思い、ここへ足を運んだのだが。 「すみません……協力したいんですが――」  明は、申し訳なさそうな様子で口を開いた。 「Innovativeは、バンド内の対立が原因で……先月、無期限で休業に入ったらしいんです。オレはドラムのオサムと仲が良かったので、彼からの情報なら耳に入ってますが――殴り合いの大喧嘩の末、そのままメンバーはケンカ別れになったようなんです。オサムはミヤビと対立してましたから、ミヤビの詳しい情報は――――ちょっと分からないんです」  明の答えに、ユウは「そうか……」と嘆息した。  見当は付けたのだが、そう一気に事は進まないようだ。
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